中小企業や個人事業主が資金調達を検討する際、「補助金・助成金」と「ファクタリング」はどちらも返済負担を抑えられる手段として注目されています。
しかし、補助金・助成金は申請から入金まで数か月を要する一方で、ファクタリングは売掛金を譲渡することで比較的短期間で資金化できるなど、仕組みや適用場面は大きく異なります。
本記事では、両者の特徴・違い・向いているケースを整理し、資金繰りに悩む経営者が自社に適した資金調達手段を選択できるよう、具体的な比較ポイントを解説します。
補助金・助成金とファクタリングの基本を理解する
資金調達を検討する際には、まず補助金・助成金とファクタリングがそれぞれどのような仕組みであるのかを正確に理解することが重要です。
どちらも「借入金を増やさずに資金を確保できる」という共通点がありますが、資金の性質や調達プロセスは根本的に異なります。ここでは、両者の基本的な定義と特徴を整理します。
補助金・助成金とは何か
補助金・助成金は、国や地方自治体が政策目的に沿った事業や雇用施策を支援するために事業者へ支出する「返済不要の公的資金」です。
中小企業庁の情報によれば、補助金は新事業・設備投資・事業再構築などの取り組みに対して経費の一部を給付する仕組みであり、原則として後払いで支給されます。
つまり、事業者は先に経費を支出し、実績報告後に審査を経て給付を受ける流れとなります。このため、資金が手元に入るまでには一定の期間を要することが一般的です。
ファクタリングとは何か
ファクタリングは、将来入金予定の売掛金をファクタリング会社へ譲渡し、その対価として売掛金の一部を先に現金化する民間の資金調達サービスです。
ファクタリングで受け取る金額は売掛金額から手数料が差し引かれたものであり、融資のような「返済義務」ではなく、売掛金の売却として会計処理されるのが一般的な位置付けとされています。
売掛金という確定債権を活用するため、審査では利用企業自体の財務状況よりも売掛先の信用力が重視される傾向があります。このため、創業間もない企業や銀行融資が難しい状況でも利用できる可能性があると説明されています。
両者の根本的な違い
補助金・助成金は「公的な支援制度」であり、政策目的に合致した事業活動を後押しするために給付される性質を持ちます。一方、ファクタリングは「民間サービス」であり、既存の売掛金という資産を活用して資金化する取引です。
この性質の違いが、資金調達のタイミング・審査基準・コスト・使途制限など、さまざまな側面での相違点につながっています。
補助金と助成金の基本的な違い
補助金と助成金は同じ「返済不要の公的資金」というカテゴリーで語られることが多いですが、実際には管轄省庁や制度の目的、採択方式などに明確な違いがあります。資金調達を検討する際には、この違いを理解しておくことが重要です。
補助金の特徴
補助金は主に経済産業省や中小企業庁、地方自治体などが管轄し、新規事業・設備投資・DX推進・事業再構築など「経済的な成長や生産性向上」を目的とした制度が多いとされています。補助金の大きな特徴は、採択枠に限りがあり「選抜型」であることです。
要件を満たしていても、審査の結果採択されなければ給付を受けることができません。申請時には事業計画の提出が求められ、審査では事業の革新性や実現可能性などが評価されます。
助成金の特徴
助成金は主に厚生労働省や労働局などが所管し、雇用・人材育成・労働環境の改善といった労働政策に関する取り組みを支援する色合いが強いとされています。助成金の特徴は、制度によって異なりますが、要件を満たせば受給しやすい傾向があるとされていることです。
補助金のような競争的な選抜プロセスではなく、要件充足型の制度が多いため、条件を満たせば比較的確実に給付を受けられる可能性があると説明されています。
ただし、補助金・助成金ともに原則として「後払い」が基本であり、申請から入金までの期間は数か月から1年程度を要することも珍しくありません。
ファクタリングの仕組みと特徴を詳しく知ろう
ファクタリングは売掛金を活用した資金調達手段ですが、その仕組みや審査基準、契約形態には独自の特徴があります。補助金・助成金との違いを理解するために、ファクタリングの詳細を把握しておくことが重要です。
ファクタリングの基本的な仕組み
ファクタリングは、売掛金を保有している企業が、その売掛金の支払期日前にファクタリング会社へ譲渡し、手数料を差し引かれた金額を先に受け取る取引形態です。
中小企業向けの資金調達解説では、ファクタリングは「融資ではなく債権の売却」であり、貸借対照表上の借入金を増やさない調達方法として紹介されています。
日本では2社間ファクタリングと3社間ファクタリングという2つの形態があります。2社間ファクタリングは利用企業とファクタリング会社間で契約が完結し、売掛先への通知は不要です。
3社間ファクタリングは売掛先も含めた三者間で契約を結び、売掛金の支払いを直接ファクタリング会社が受け取る形態です。
審査のポイントと資金化のスピード
ファクタリングの審査では、利用企業自体の財務状況よりも「売掛先の信用力」が重視されると説明されています。これは、ファクタリング会社にとって最も重要なのが「売掛金が確実に回収できるか」という点だからです。
ファクタリングの大きな特徴は、資金化までのスピードです。申し込みから審査を経て、早ければ数日から1週間程度で入金されると説明されることが一般的です。
コスト面では、売掛金額に対して一定の手数料が発生します。手数料率はファクタリング会社や契約形態によって異なります。
補助金・助成金とファクタリングの比較ポイント
補助金・助成金とファクタリングを実際に選択・活用する際には、複数の観点から比較検討することが重要です。ここでは、実務上特に重要となる比較ポイントを整理します。
資金の性質と返済義務
補助金・助成金は返済不要の支援金であり、要件を満たして給付を受けた場合、原則として返済義務は発生しません。ただし、事業を中止した場合や不正が発覚した場合には返還を求められることがあります。
ファクタリングは売掛金の譲渡対価であり、融資のような返済義務はありません。ただし、2社間ファクタリングの場合、売掛先から入金があった際にはファクタリング会社へ速やかに支払う義務が生じます。
資金が入るタイミングと審査基準
補助金・助成金は申請・採択・実績報告後に後払いが基本であり、申請から入金まで数か月から1年程度を要することが一般的です。一方、ファクタリングは申し込みから審査後、早ければ短期間で入金されると説明されています。
補助金は採択枠があり競争型であるため、要件を満たしていても必ず給付されるとは限りません。助成金は要件充足型が多く、条件を満たせば受給しやすい傾向があるとされていますが、制度によって異なります。
ファクタリングの審査では売掛先の信用力や債権内容が重視され、利用企業自体の財務状況は二次的な要素となります。
使途制限とコスト
補助金・助成金は制度ごとに対象経費や事業内容が細かく指定されています。また、給付額に対して一定の自己負担が求められることが一般的です。
ファクタリングで得た資金は、一般に使途が問われないとされています。運転資金、仕入代金、給与支払いなど、自由に使えることが多いですが、契約ごとに条件が設定される場合もあります。
コスト面では、売掛金額から手数料が差し引かれるため、実質的な資金調達コストが発生します。
どんな場面でどちらを選ぶべきか
補助金・助成金とファクタリングは、それぞれ適した活用場面が異なります。自社の資金需要の性質やタイミング、事業計画の内容に応じて、最適な選択肢を見極めることが重要です。
補助金・助成金が向いているケース
複数の中小企業支援サイトでは、補助金・助成金は「新規事業・設備投資・DX推進・雇用施策など、中長期的な取り組みのコスト軽減」に適すると説明されています。
新しい設備を導入する際の初期投資を抑えたい、新規事業の立ち上げコストを軽減したい、従業員の研修費用を補いたいといった場合には、補助金・助成金が有効な選択肢となります。
ただし、申請から給付まで時間を要するため、「すでに資金計画が立っており、給付を待つ余裕がある」ことが前提となります。
ファクタリングが向いているケース
ファクタリングは、「売掛金の入金サイトが長く、運転資金が一時的に不足している場面」や「銀行融資の追加が難しいが売掛金はある企業」に選択肢として挙げられることが多く、短期の資金繰り改善に活用しやすい調達手段とされています。
取引先の支払いサイトが長く、その間の仕入代金や給与支払いに困っている、急な受注で仕入資金が必要だが銀行融資は時間がかかる、季節変動で一時的に資金が不足するといった場合に有効です。また、銀行借入枠を温存しておきたい場合にも選択肢となります。
目的とタイミングで使い分ける考え方
資金の目的と必要なタイミングに応じて組み合わせる発想が有効と考えられます。中長期的な事業投資には補助金・助成金を活用し、日々の運転資金や急な資金需要にはファクタリングを活用するという使い分けです。
新規設備導入に補助金を申請しながら、その間の運転資金をファクタリングで確保する、助成金の給付を待つ間の人件費をファクタリングで賄うといった組み合わせが考えられます。ただし、具体的な活用方法は事業内容や財務状況によって異なるため、専門家への相談が推奨されます。
資金繰りに悩む場合の行動指針
資金調達は「どれか一つを選ぶ」のではなく、複数の手段を組み合わせて自社の資金繰りを安定させる視点が重要です。ここでは、補助金・助成金とファクタリングの特性を踏まえた活用の考え方を提案します。
資金調達のポートフォリオを構築する
中小企業向けの資金調達解説では、「自己資金・融資・出資・補助金・助成金・ファクタリングなどを組み合わせ、自社のキャッシュフローに合うポートフォリオを作るべき」とする考え方が紹介されています。
基幹的な運転資金は銀行融資で確保し、設備投資や新規事業には補助金を活用し、一時的な資金ショートにはファクタリングを利用するという組み合わせです。それぞれの資金調達手段の特性を理解し、適材適所で活用することで、資金繰りの安定性が高まります。
時間軸を意識した資金計画
「返済不要だが時間がかかる補助金・助成金」と「売掛金を活用して比較的早く資金化できるファクタリング」を時間軸で使い分ける発想が有効と考えられます。中長期的な視点では、補助金・助成金の申請計画を立て、コスト軽減や事業拡大の原資として活用します。
短期的な視点では、売掛金の入金サイクルと支払いサイクルを把握し、資金ショートが予想される時期にファクタリングを活用する計画を立てることが考えられます。
自社に合った選択を専門家と相談する
資金繰りが逼迫している経営者・個人事業主にとっては、「補助金・助成金に挑戦しつつ、入金までの運転資金や売掛金の入金待ちにファクタリングを検討する」という選択肢も一案といえます。
ただし、具体的な資金調達手段の選択や併用は、事業内容・財務状況・利用条件によって最適解が異なります。税理士や中小企業診断士などの専門家、金融機関、ファクタリング事業者に相談しながら、自社にとって無理のない資金計画を立てることが望ましいと考えられます。
まとめ
補助金・助成金とファクタリングは、どちらも借入金を増やさずに資金を確保できる手段ですが、資金の性質・入金タイミング・審査基準・使途制限などが大きく異なります。補助金・助成金は中長期的な事業投資のコスト軽減に適し、ファクタリングは短期的な資金繰り改善に有効です。
自社の資金需要の目的とタイミングに応じて使い分けることで、より安定した資金繰りを実現できる可能性があります。専門家への相談を通じて、自社に最適な資金調達ポートフォリオを構築することが重要です。
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経営支援会社で資金繰り相談に関わった経験をもとに、経営改善や資金調達に関する記事を執筆。制度の解説や比較記事を得意とし、専門的な内容を“実務で使える知識”として整理するスタイルに定評がある。読者の疑問を想定した丁寧な解説を追求している。

