「今月の給料が払えないかもしれない」という不安は、従業員5〜10名規模の会社を経営する社長にとって、決して珍しくない資金繰りの危機です。給料の未払いは労働基準法24条により原則として認められておらず、悪質な場合には罰則が科される可能性があります。
本記事では、法律や資金繰りの事実を踏まえながら、今すぐ取るべき具体的な手順と、ファクタリングを含む資金調達の選択肢を整理します。
給与が払えない会社がまず知るべき現実
給与が払えない会社の多くは、赤字ではなく売掛金の回収前に支払いが集中することで資金繰りが悪化しています。「支払いを遅らせる」「入金を早める」「資金調達を行う」という3つの方向で資金繰りを整理することが推奨されます。
給与未払いが経営に及ぼす影響
給料の未払いは、社員の生活に直結し、会社への信頼低下や離職、さらには訴訟リスクなど経営に重大な影響を及ぼします。特に5〜10名規模の会社では、社員一人ひとりが事業の中核を担っているため、給与トラブルによる離職は事業継続に直接的な打撃を与えます。
したがって、「給料が払えない会社」の社長は、売上や利益よりもまず「社員の給与支払いをどう守るか」に焦点を当てて資金繰りを組み立てる必要があります。この優先順位の明確化が、危機を乗り越えるための第一歩となります。
黒字倒産のリスクを理解する
黒字であっても資金繰りが悪化する「黒字倒産」は、中小企業にとって現実的なリスクです。売上は計上されているものの、実際の入金が数ヶ月先になる場合、その間に給与や仕入代金などの支払いが発生すれば手元資金が不足します。
損益計算書だけでなく、キャッシュフロー(現金の流れ)を正確に把握することが不可欠です。利益が出ているからといって安心せず、日々の資金繰り管理を徹底することが給与未払いを防ぐ基本となります。
給与未払いの法律リスクと罰則
日本の労働基準法24条では、賃金は通貨で直接労働者に全額を支払うことが原則として定められており、賃金の未払いは原則として違法行為とされています。この規定は、労働者の生活を保護するための重要な法律です。
給与未払いに対する罰則
賃金の未払いが悪質な場合には、労働基準法120条により罰金が科される可能性があります。また、残業代(割増賃金)の未払いは労働基準法37条違反として、より重い罰則の対象となり得ます。
これらの罰則は、単なる形式的なものではなく実際に適用されるケースが存在します。労働基準監督署への通報があった場合、調査が入り是正勧告や場合によっては刑事告発につながる可能性もあります。
遅延損害金と法的手続きのリスク
給与の支払いが遅れた場合、労働者は遅延損害金を請求する権利を持ちます。未払い期間が長引くほど企業の負担は増大します。
さらに、給与未払いが続くと労働者が労働基準監督署に申告したり、裁判所に支払督促を申し立てたりする可能性があります。これらの法的手続きが進むと、企業の信用は大きく損なわれ取引先や金融機関との関係にも悪影響を及ぼします。
給与が払えない会社の資金繰りチェック
給与が払えないときには、まず「いつ・いくら不足するのか」を資金繰り表で具体的に把握することが重要です。感覚的な判断ではなく、数値に基づいた現状認識が対策の出発点となります。
資金繰り表の作成方法
給料日までの入出金を一覧にし、以下の項目ごとに整理します。
- 給与
- 仕入・外注
- 家賃
- 税金・社会保険
- 借入金返済
日付ごとに入金予定額と支出予定額を記載し、日々の残高推移を把握することが推奨されています。不足額を正確に把握することで、取り得る選択肢が明確になります。エクセルなどの表計算ソフトを使えば、比較的簡単に作成できます。
売掛金と入金予定の確認
5〜10名規模の会社の場合、1回の給料支払いに必要な金額が大きくなるため、「不足額」と「売掛金の入金予定日」を並べて確認することが重要です。売掛金の入金が給料日の直前や直後に予定されている場合、わずかな日数のズレが資金繰りに大きく影響します。
また、売掛先の支払い遅延リスクも考慮に入れる必要があります。過去に支払いが遅れたことがある取引先については、入金予定日に確実に入金されるとは限らないため余裕を持った資金繰り計画を立てることが賢明です。
給与を最優先にするための支払い調整
「支払いを遅らせる」ことが、給与未払いを避けるための具体的な手段の一つです。これは、すべての支払いを無秩序に延ばすことではなく戦略的な優先順位付けを意味します。
支払い優先順位の考え方
以下のような支払いについて、取引先や金融機関と相談し支払期日の延長やリスケジュールを検討する方法が挙げられています。
- 買掛金・外注費:取引先に一時的な支払い猶予を相談する
- 家賃などの固定費:オーナーや管理会社と支払い日の調整を相談する
- 銀行返済:金融機関に元金据え置きや返済条件の見直しを相談する
長年の取引関係があれば、事情を説明することで理解を得られる可能性があります。各支払先に対して誠実に状況を説明し、理解と協力を求める姿勢が信頼関係の維持につながります。
税金・社会保険料の取り扱い
税金や社会保険料については、滞納による延滞金や差し押さえリスクがあるため、安易に後回しにするのではなく税務署や年金事務所などへの分納相談を行うことが推奨されています。特に社会保険料は、滞納が続くと財産の差し押さえに発展する可能性があります。
税務署や年金事務所では、経営状況を説明すれば分割納付などの相談に応じてくれるケースがあります。重要なのは、滞納が確定する前に自ら相談に行くことです。
明日給料が払えないときの資金調達策
「明日給料が払えない」という状況では、銀行融資の新規申し込みは審査に時間がかかるため現実的な選択肢になりにくいとされています。通常、銀行融資は申し込みから実行まで数週間から1ヶ月程度かかります。
短期資金調達の選択肢
このような緊急時には、以下のような短期資金調達手段が選択肢として挙げられます。
- ビジネスローン:ノンバンクなどが扱う事業者向けローンで、比較的早い審査が特徴
- ファクタリング:売掛債権を買い取ってもらい、入金前に現金化する方法
- 経営者個人からの貸付:社長個人の資金を会社へ貸し付ける形で一時的に資金を補う方法
ビジネスローンは最短で数日程度での融資実行が可能な場合もあります。ファクタリングは最短即日での資金調達が可能な場合があり、売掛金という既に発生している債権を活用するため新規の借入とは異なる仕組みです。
資金調達時の注意点
個人からの貸付を行う場合は、個人と法人の資金を混同しないよう必ず貸付契約書を作成し、適切な金利設定を行うことが重要です。
複数のファクタリングサービスでは、「申し込みから最短即日で資金化できる」「赤字決算や税金滞納があっても、売掛先の信用力が高ければ利用できる場合がある」といった特徴が挙げられています。
ただし、手数料水準や契約条件は各社により異なるため、利用前に複数社の条件を比較検討することが必要です。
ファクタリングで給料資金を確保する考え方
ファクタリングは、売掛金をファクタリング会社に譲渡し手数料を差し引いた額を先に受け取る資金調達方法です。ファクタリングは融資ではなく債権の売買契約であり、負債として計上されないため、借入枠を圧迫しないという特徴があります。
ファクタリングのメリット
ファクタリングの大きなメリットは、審査の対象が主に売掛先企業の信用力である点です。税金滞納中や赤字決算、代表者の信用情報に問題がある場合でも、売掛先企業の信用力が高ければ利用できる可能性があるとされています。
また、審査から入金までのスピードが速く最短で申し込み当日に資金化できる場合もあります。これは、給料日が迫っている状況では非常に重要な要素です。さらに、売掛債権という既存の資産を活用するため新たな担保や保証人を用意する必要がない点もメリットと言えます。
ファクタリング利用時の注意点
一方で、ファクタリングの手数料はサービスによって幅があり、契約内容によってはコストが高くつく可能性も指摘されています。一般的に、2社間ファクタリング(売掛先に通知しない方式)は手数料が高く、3社間ファクタリング(売掛先に通知する方式)は手数料が低い傾向があります。
「今回の給与分の資金手当」と「今後のキャッシュフロー改善」の両方を見据え、短期的な緊急策としての利用と中長期的な資金繰り見直しをセットで検討することが重要です。ファクタリングを繰り返し利用すると、手数料負担が累積しかえって資金繰りを悪化させる可能性があるため計画的な利用が求められます。
社員への説明と社長がやってはいけないこと
賃金未払い問題が発生した場合、労働基準監督署への相談や法的手続きに発展するリスクがあるとされています。給与未払いを放置すると、遅延損害金の支払い義務や場合によっては刑事罰、企業の信用低下につながることもあるでしょう。
避けるべき対応
「給与が払えない会社」の社長が避けるべき行動としては、以下のようなものが挙げられます。
- 給与遅延や未払いの事実を隠し続けること
- 期日直前まで社員に何も説明せず、突然の未払いを通知すること
- 違法性が疑われる高利の違法融資や、給与ファクタリングなど問題のあるスキームに安易に手を出すこと
情報を隠せば隠すほど、社員の不信感は高まり最終的により深刻な事態を招きます。給与ファクタリングの違法性やトラブルについては、金融庁や消費者庁などからも注意喚起がなされています。
望ましい対応方法
やむを得ず給与支払いに遅れが生じる可能性がある場合には、できるだけ早期に状況と今後の支払い見通しを説明し具体的な対応計画を示すことが望ましいと考えられます。社員に対しては、「いつまでに」「どのように」支払うかを明確に伝えることが重要です。
また、資金調達の進捗状況や支払い優先順位の調整状況なども共有することで、会社が誠実に対応しようとしている姿勢を示すことができます。個別のケースでは、弁護士や社会保険労務士などの専門家への相談が推奨されます。
まとめ
「給料が払えない会社」の社長が直面しているのは、「社員の生活」「会社の信用」「法的リスク」が絡み合う重い課題です。
しかし、資金繰り表での現状把握、支払いの優先順位付け、取引先や金融機関への相談、ファクタリングなどの短期資金調達、社員への誠実な説明といった具体的な手順を踏むことで、最悪の事態を回避できる可能性があります。
数字を直視し、優先順位を決め、必要であれば専門家に相談しながら、社員の給与と会社の未来を守る具体的なアクションへ進んでいくことが求められます。
