ファクタリングには「2社間」「3社間」「診療報酬型」など複数の契約形態があり、それぞれ仕組みや手数料、取引先への通知の有無が大きく異なります。
本記事では、各契約形態の特徴を事実ベースで整理し、自社に適した選択をするための判断基準を具体的に解説します。資金繰り改善を検討している経営者や経理担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
ファクタリング契約形態の基本
ファクタリングの契約形態は、関わる当事者の数や取引先への通知の有無によって分類されます。一般事業向けと医療・介護向けでは基本的な構造が異なるため、まずは全体像を把握することが重要です。
主な契約形態の種類
一般的な事業向けファクタリングは、「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」に大別されます。2社間ファクタリングは、利用者とファクタリング会社の2者で契約を結ぶ形態です。
一方、3社間ファクタリングは、利用者、ファクタリング会社、売掛先である取引先の3者が関わる契約形態となります。いずれも売掛債権の譲渡を基本構造としていますが、契約に関わる当事者の数と取引先への通知方法が異なります。
医療・介護分野では、診療報酬債権や介護報酬債権を対象とした専用のファクタリングサービスが提供されています。これらは公的保険制度に基づく債権を扱うため、一般事業向けとは異なる特性を持っています。
買取型と保証型の違い
契約形態とは別の分類として、「買取型」と「保証型」という区分も存在します。買取型は、ファクタリング会社が売掛債権を買い取って資金を提供するスキームです。
保証型は、売掛金の回収不能リスクをファクタリング会社が保証する仕組みであり、資金調達というよりも信用リスク管理の手段として位置づけられます。国内で事業資金調達を目的とする場合、買取型ファクタリングが主流となっています。
2社間ファクタリングの仕組みと特徴
2社間ファクタリングは、利用者とファクタリング会社の2者間で契約を結ぶ形態です。取引先への通知を行わない点が最大の特徴であり、資金繰りの状況を知られたくない事業者に適しています。
基本的な取引の流れ
利用者がファクタリング会社に売掛債権を譲渡し、ファクタリング会社から買取代金を受け取ります。その後、売掛金の入金期日が到来すると、取引先から利用者の口座に通常どおり入金が行われます。
利用者は、取引先から受け取った売掛金を契約に基づいてファクタリング会社へ支払います。このように、取引先を契約に関与させない点が2社間ファクタリングの特徴です。
手数料と向いている事業者
2社間ファクタリングでは、ファクタリング会社が取引先から直接回収できないため、回収リスクを負います。このため、3社間ファクタリングと比較して手数料が高くなる傾向があります。
資金繰りの状況を取引先に知られたくない事業者や、急ぎで資金化が必要な場合に選ばれやすい形態です。審査から入金までのスピードが比較的速い点も特徴として挙げられます。
3社間ファクタリングの仕組みと特徴
3社間ファクタリングは、利用者、ファクタリング会社、売掛先である取引先の3者が関わる契約形態です。取引先に債権譲渡の事実を通知する点が特徴であり、手数料を抑えたい事業者に適しています。
基本的な取引の流れ
取引先に対して債権譲渡の事実を通知し、場合によっては同意を得る手続きが含まれます。売掛金の支払期日が到来した際には、取引先がファクタリング会社に対して直接支払いを行う仕組みが一般的です。
ファクタリング会社は、利用者を経由せずに売掛金を回収できるため、回収リスクが低減されるとされています。民法上、債権譲渡は債務者である取引先への通知または承諾がなければ債務者に対抗できないとされており、3社間ファクタリングはこの法的要件を満たす形で設計されています。
取引先の承諾取得に時間がかかる場合もあるため、急ぎの資金調達には向かない可能性があります。事前に取引先との調整が必要となるため、計画的な利用が求められます。
手数料と向いている事業者
ファクタリング会社が取引先から直接回収できるため、2社間と比較して回収リスクが抑えられます。このため、手数料率は2社間よりも低く設定される傾向があると複数の解説資料で説明されています。
取引先との関係が安定しており、債権譲渡の事実を伝えても問題がない事業者に適しています。特に、継続的な取引がある相手や、取引先自身がファクタリングの利用に理解がある場合に選ばれやすい形態です。
一方で、取引先に「経営状態が悪化しているのではないか」という懸念を持たれる可能性があると指摘されています。このリスクは業種や取引先の理解度によって異なるため、事前に関係性を考慮した判断が必要です。
診療報酬型ファクタリングの特徴
診療報酬型ファクタリングは、医療機関や介護事業所が保有する公的債権を対象とした専用サービスです。公的機関からの支払いという点で回収の確実性が高く、一般事業向けとは異なる特性を持っています。
仕組みと対象債権
病院やクリニックなどの医療機関が保有する診療報酬債権を対象としたファクタリングサービスです。診療報酬は、国民健康保険団体連合会や社会保険診療報酬支払基金などの公的機関から支払われる債権であり、通常は診療月の翌々月に入金されます。
同様に、介護報酬を対象としたファクタリングサービスも提供されており、介護事業者が保有する介護報酬債権を早期資金化できる仕組みとなっています。診療報酬や介護報酬の入金までには、レセプト審査や請求処理の期間として通常2か月程度を要するため、この期間の資金繰りを補う手段として活用されています。
手数料と向いている事業者
債権の支払い元が公的機関であるため、一般的な売掛債権と比較して回収の確実性が高いとされています。このため、手数料率は比較的低めに設定される傾向があります。
開業直後で運転資金が不足している医療機関や、設備投資のタイミングと報酬入金時期のズレに悩む事業者にとって有効な選択肢となります。ただし、レセプト請求の仕組みについて一定の理解が必要となる点には留意が必要です。
自社に合う契約形態を選ぶ視点
契約形態の選択は、自社の資金繰りの状況や取引先との関係性によって異なります。適切な判断をするためには、複数の視点から自社の状況を整理することが重要です。
取引先への通知の可否
自社に適した契約形態を選ぶ際の第一の視点は、取引先に債権譲渡の事実を知られても問題がないかどうかという点です。取引先との関係が安定している場合、手数料が低い3社間ファクタリングが選択肢となります。
一方、資金繰りの状況を取引先に知られたくない場合には、2社間ファクタリングを検討することになります。業界の慣行や取引先の企業文化によっても判断が変わるため、自社の置かれた状況を総合的に評価することが重要です。
手数料とスピードのバランス
資金調達にかかるコストと、資金化までのスピードのバランスも重要な選択基準です。急ぎで資金が必要な場合、審査から入金までが比較的速い2社間ファクタリングが適している可能性があります。
コストを抑えることを優先する場合には、手数料が低めの3社間ファクタリングや、公的債権を扱う診療報酬型ファクタリングが候補となります。複数のファクタリング会社から見積りを取得し、比較検討することが重要です。
業種と債権の種類
自社の業種や保有する債権の種類も、契約形態選択の重要な要素です。医療機関や介護事業所であれば、診療報酬や介護報酬を対象とした専用サービスを利用することで、有利な条件を得られる可能性があります。
一般事業者の場合でも、取引先の信用力によって審査条件が変わるため、主要な売掛先の状況を整理しておくことが有効です。継続的な売掛債権がある場合と、スポット的な案件の場合でも、適した契約形態が異なります。
怪しい契約を見抜くチェックポイント
ファクタリングを利用する際には、適切な事業者を選ぶことが重要です。契約前に確認すべきポイントを押さえることで、トラブルを未然に防ぐことができます。
契約書の内容確認
契約書に「金銭消費貸借契約」と記載されている場合や、担保や保証人を求められる場合は、通常のファクタリングとは異なる可能性があるため注意が必要です。ファクタリングは債権の売買であり、貸金業ではないため、本来は貸金業法の規制対象外とされています。
見積書や契約書を提示せず、口頭だけで契約を進めようとする業者は避けるべきだとされています。正規のファクタリング会社であれば、契約内容を書面で提示し、利用者が内容を確認する時間を確保するはずです。
契約形態の説明が具体的であるか、法律や制度に関する説明が極端に曖昧であったり、逆に断定的すぎたりしないかも確認すべき点です。信頼できる事業者であれば、契約の仕組みや法的根拠について丁寧に説明するでしょう。
手数料と費用の透明性
手数料が相場から大きく外れて極端に高い場合や、手数料以外の費用について説明がない場合は慎重な判断が求められます。契約前に、以下の点を確認することが重要です。
- 手数料率とその計算方法
- その他の費用の内訳
- すべての費用が契約書に明記されているか
契約後に当初の説明にはなかった費用を請求されるケースもあるため、不明点や疑問点がある場合は契約前に必ず質問することが重要です。
まとめ
ファクタリングには「2社間」「3社間」「診療報酬型」など複数の契約形態が存在し、それぞれに特徴があります。どの形態が絶対的に優れているということはなく、自社の資金繰りの課題や取引先との関係性に合わせて選択することが重要です。
契約形態を選ぶ際には、自社の状況を整理したうえで、複数のファクタリング会社から見積りを取り寄せ、手数料率や入金スピードを比較検討することをおすすめします。
.png)
経営支援会社で資金繰り相談に関わった経験をもとに、経営改善や資金調達に関する記事を執筆。制度の解説や比較記事を得意とし、専門的な内容を“実務で使える知識”として整理するスタイルに定評がある。読者の疑問を想定した丁寧な解説を追求している。

