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契約内容を変更したいときに押さえるべき正しい手続きと実務ポイント

契約は一度締結したら終わりではなく、事業環境や取引条件の変化に応じて見直しが必要になる場面が少なくありません。特に実務の現場では、契約条件が現状に合わなくなっていることに気づきながらも、「どこまで変更できるのか」「どのような手続きを踏めばよいのか」が分からず、対応を後回しにしてしまうケースが見受けられます。契約内容を適切に変更しないまま取引を続けると、思わぬリスクやトラブルにつながる可能性があります。

契約変更には、当事者間の合意が不可欠であり、法律上のルールや実務慣行を踏まえた慎重な対応が求められます。単なる口約束では足りない場合も多く、書面での手続きが重要な意味を持ちます。本記事では、契約内容を変更したいと考えたときに押さえておくべき基本的な考え方から、実務で役立つ具体的な手続き方法までを体系的に整理します。契約の変更に不安を感じている方が、正しい判断と行動を取れるようになることを目的としています。


契約変更の基本的な考え方

契約が持つ法的な意味と拘束力

契約は、当事者同士の意思表示が一致することで成立し、法的な拘束力を持つものとされています。日本の民法においても、契約は当事者の合意によって成立し、その内容は原則として尊重されるとされています(民法第521条)。このため、一度締結した契約は、当事者の一方的な判断だけで自由に変更できるものではありません。

実務では、契約書に記載された条件がそのまま権利義務の基準となるため、内容を変更する場合には、元の契約と同じように慎重な取り扱いが必要になります。軽い認識で条件を変えてしまうと、後になって「そんな合意はしていない」と主張されるリスクが生じます。

契約内容は合意によって変更できる

契約は合意によって成立する以上、変更についても当事者双方の合意があれば可能とされています。これは判例や実務でも一貫した考え方で、特別な法律で制限されていない限り、契約内容の一部または全部を変更することができます。

ただし、合意が成立したことをどのように証明するかが重要になります。特に金銭条件や契約期間など、後々争点になりやすい事項については、明確な形で合意内容を残すことが実務上不可欠と考えられています。

変更できないケースが存在する点に注意

すべての契約が自由に変更できるわけではありません。法律で定められた強行規定に反する内容や、消費者契約法などで消費者に不利とされる変更は無効となる可能性があります。また、契約書自体に「変更は書面による合意が必要」といった条項が設けられている場合、その手続きを守らなければ変更の効力が認められないこともあります。

契約変更を検討する際は、まず元の契約書を確認し、変更に関する規定が存在するかどうかを把握することが重要です。


契約内容を変更したい場面でよくあるケース

取引条件や金額を見直したい場合

実務で多いのが、取引金額や支払条件の見直しです。原材料費の高騰や事業規模の拡大など、当初想定していなかった事情が発生することで、契約条件が実態に合わなくなることがあります。

このような場合、相手方との信頼関係を前提に、変更の必要性を丁寧に説明することが重要です。一方的に条件変更を求めるのではなく、双方にとって合理的な内容であることを示すことで、合意形成がスムーズに進むとされています。

契約期間や更新条件を変更したい場合

契約期間の延長や短縮、更新方法の変更も、契約変更の代表的なケースです。特に自動更新条項がある契約では、更新条件を明確にしておかないと、意図しない形で契約が継続してしまうことがあります。

期間や更新条件の変更は、将来の取引関係に大きな影響を与えるため、書面での合意が強く求められる分野です。口頭での合意だけでは、後日内容を巡って争いになるリスクが高いと考えられます。

業務内容や役割分担を修正したい場合

契約締結後に業務内容が変化し、当初の役割分担が実情に合わなくなることもあります。このような場合、業務範囲を明確にし直すことで、責任の所在や報酬の考え方を整理できます。

業務内容の変更は、責任範囲や損害賠償の問題にも影響するため、曖昧な表現を避け、具体的に書面へ反映させることが実務上重要とされています。


契約変更手続きの基本的な流れ

変更内容を明確に整理する

契約内容を変更したいと考えたとき、最初に行うべきは、どの条文をどのように変更したいのかを明確にすることです。「条件を少し変えたい」といった曖昧な状態では、相手方との認識にズレが生じやすくなります。

具体的な条文番号や文言を示しながら変更案を整理することで、話し合いが現実的かつ建設的に進みやすくなります。

相手方と協議し合意を形成する

次に、相手方と変更内容について協議を行います。この段階では、変更の背景や理由を説明し、相手方の意見にも耳を傾ける姿勢が重要です。契約は双方の合意によって成り立つため、一方的な主張は合意形成を妨げる要因となります。

実務では、複数回の協議を経て条件を調整することも珍しくありません。合意に至るまでの過程を丁寧に進めることが、後のトラブル防止につながります。

合意内容を書面に反映させる

合意が成立したら、その内容を書面に落とし込むことが重要です。一般的には「変更契約書」や「覚書」といった形式で作成されます。元の契約書を修正する形ではなく、変更点のみをまとめた書面を別途作成するケースも多く見られます。

書面には、変更する条文、変更後の内容、変更の効力が発生する日付などを明確に記載します。双方が署名または記名押印することで、合意の証拠としての効力が高まります。

書面で行う契約変更の重要性

口頭合意が抱える実務上のリスク

契約変更について当事者間で話し合いがまとまり、「お互いに分かっているから大丈夫」と考えてしまう場面は少なくありません。しかし、口頭での合意は後になって内容を巡る認識の違いが表面化しやすく、紛争の原因になりやすいとされています。民法上、口頭契約であっても契約自体は成立するとされていますが、実務では「合意があったかどうか」「どこまで合意したのか」を証明することが困難になります。

特に契約内容の変更は、元の契約書と異なる条件を主張することになるため、証拠の重要性がより高まります。口頭合意のみで進めた結果、相手方から変更内容を否定され、元の契約条件が優先される事態も想定されます。このようなリスクを避けるためにも、書面による契約変更が基本と考えられています。

変更契約書と覚書の使い分け

契約変更を文書化する方法としては、変更契約書や覚書が一般的に用いられます。変更契約書は、元の契約を前提としつつ、変更内容を正式な契約として再度取り交わす形式です。一方、覚書は、既存契約の一部変更や補足を簡潔にまとめる目的で作成されることが多いとされています。

どちらの形式を選ぶかは、変更内容の重要性や範囲によって判断されます。契約の根幹に関わる条件を変更する場合は変更契約書、限定的な修正であれば覚書といった使い分けが、実務では一般的と考えられています。

元の契約との関係性を明確にする

書面を作成する際には、元の契約との関係を明確に記載することが重要です。「本覚書は、〇年〇月〇日締結の契約書の一部を変更するものである」といった形で、対象となる契約を特定します。これにより、どの契約のどの部分が変更されたのかが明確になり、解釈の余地を狭めることができます。

また、「本書に定めのない事項については、元の契約の定めが引き続き適用される」といった一文を加えることで、不要な誤解を防ぐ効果も期待できます。


契約変更でトラブルを防ぐための注意点

一方的な変更は原則として無効

契約内容は当事者双方の合意によって成立しているため、一方的な通知だけで条件を変更することは、原則として認められていません。たとえ「事情が変わった」「やむを得ない理由がある」と感じていても、相手方の同意がなければ変更の効力は生じないとされています。

実務では、一方的な変更を強行した結果、契約違反として損害賠償請求を受けるケースも報告されています。変更を検討する際は、必ず協議と合意のプロセスを踏むことが重要です。

契約変更条項の有無を確認する

契約書の中には、「本契約の変更は書面による合意によらなければならない」といった契約変更条項が設けられている場合があります。このような条項があるにもかかわらず、口頭やメールのみで変更した場合、変更の有効性が否定される可能性があります。

契約変更を進める前には、必ず元の契約書を読み返し、変更手続きに関する定めがあるかどうかを確認することが、トラブル防止につながります。

変更日と適用範囲を明確にする

契約変更の書面では、変更の効力がいつから発生するのかを明確に記載することが重要です。日付を曖昧にしたままにすると、「どの期間にどの条件が適用されるのか」を巡って争いが生じるおそれがあります。

また、過去にさかのぼって適用するのか、将来分のみ適用するのかといった点も、当事者間で明確にしておく必要があります。実務では、原則として将来に向けた変更とするケースが多いと考えられています。


契約変更を円滑に進めるための実務的工夫

変更理由を論理的に説明する

契約変更を申し出る際には、感情的な主張ではなく、客観的な事情を整理して説明することが重要です。市場環境の変化や業務内容の変動など、第三者から見ても理解しやすい理由を示すことで、相手方の納得を得やすくなります。

理由を明確にすることで、相手方も変更内容を前向きに検討しやすくなり、結果として合意形成がスムーズに進むとされています。

記録を残しながら協議を進める

契約変更に関するやり取りは、できる限り記録として残しておくことが望ましいと考えられています。メールや書面でのやり取りを保存しておくことで、後日「そのような話は聞いていない」といった主張を防ぐ材料になります。

協議の過程を丁寧に記録する姿勢は、信頼関係の維持にもつながります。

専門家への相談を検討する

契約内容が複雑であったり、変更が大きな影響を及ぼす場合には、専門家への相談を検討することも一つの方法です。法律の専門家は、契約文言の適切性やリスクについて客観的な視点から助言を行うことができます。

すべてのケースで必須というわけではありませんが、将来的なトラブルを未然に防ぐという観点では、有効な選択肢と考えられます。


契約内容を変更する際に押さえておきたい視点

信頼関係を前提に進める姿勢

契約変更は、相手方との信頼関係があってこそ円滑に進みます。一方的な要求や急な変更は、関係悪化を招くおそれがあります。丁寧な説明と協議を重ねる姿勢が、長期的な取引関係の維持につながります。

将来を見据えた内容に整える

契約変更は、単なる修正作業ではなく、今後の取引を見据えて条件を整える機会でもあります。その場しのぎの変更ではなく、将来の状況変化にも対応できる内容になっているかを意識することが重要です。

書面化による安心感を重視する

書面による契約変更は、双方にとって安心材料となります。合意内容が明確になり、不要な疑念や誤解を防ぐ効果が期待できます。結果として、実務の効率化にもつながると考えられます。


まとめ

契約内容を変更したいと感じたとき、重要なのは「変更できるかどうか」だけでなく、「どのような手続きを踏むべきか」を正しく理解することです。契約は当事者双方の合意によって成立している以上、変更についても同様に合意が不可欠となります。一方的な判断や口頭のみのやり取りは、後々大きなトラブルを招く原因になりかねません。

実務では、変更内容を明確に整理し、相手方と十分に協議を行い、その結果を適切な書面に落とし込むことが基本とされています。変更契約書や覚書を活用し、元の契約との関係性や変更の効力発生日を明確にすることで、契約の透明性と安全性を高めることができます。

また、契約変更は単なる事務手続きではなく、取引関係を見直す重要な機会でもあります。信頼関係を大切にしながら、将来を見据えた内容に整える姿勢が、安定した取引の継続につながると考えられます。契約内容を変更したい場面に直面した際は、焦らず、正しい手続きを踏むことを意識して行動することが重要です。

ABOUT ME
井原慎
中小企業のバックオフィス支援に長年携わるビジネスライター。売掛管理やキャッシュフロー、資金繰り改善など実務に密着したテーマを得意とする。経営者・経理担当に向けて複雑な金融概念をわかりやすく整理し、実務で使える知識として届けることをモットーとしている。