中小企業を中心に、売掛金の入金サイト長期化により資金繰りに課題を抱える経営者が増えています。金融庁はファクタリングを「事業者が保有する売掛債権等を期日前に一定の手数料を支払って譲渡し、資金を調達するサービス」と定義しています。
本記事では、企業がファクタリングを利用する主な3つの目的を「資金繰りの改善」「成長投資」「銀行融資が困難な局面での資金調達」という観点から解説します。
ファクタリングの基本的な仕組み
ファクタリングは、企業が保有する売掛債権を譲渡することで期日前に資金化する手法です。通常の取引では入金まで30日から90日程度かかりますが、ファクタリングを利用することでこの期間を待たずに現金を確保できます。ここでは、ファクタリングの仕組みと融資との違いについて説明します。
ファクタリングによる資金調達の流れ
ファクタリングでは、企業がファクタリング会社に売掛債権を譲渡し、手数料を差し引いた金額を受け取ります。その後、売掛先企業から支払期日に入金された代金は、ファクタリング会社が回収する仕組みです。
この仕組みにより、企業は売掛金の回収を待つことなく必要な資金を確保できます。特に入金サイトが長い業種では、仕入代金や人件費などの支払いに充てる運転資金を早期に準備できる点がメリットとされています。
融資との違いと特徴
ファクタリングは「売掛債権の売却」であり、金融機関からの借入とは性質が異なります。銀行融資では負債として貸借対照表に計上されますが、ファクタリングは債権の譲渡であるため、契約形態によっては負債に計上されないケースもあります。
また、銀行融資では自社の財務状況が審査の中心となりますが、ファクタリングでは主に売掛先企業の信用力が重視されます。資金化までの期間も、融資では数週間から1か月程度かかるのに対し、ファクタリングでは最短で即日から数日程度とされています。
目的1:資金繰りの改善と運転資金の確保
多くの解説記事では、ファクタリングは「売掛金の入金までに時間がかかる場合や、突発的な支払いが発生した際に資金繰りを改善する手段」として紹介されています。
建設業や運送業、製造業の下請け企業などでは入金サイトが長期化しやすく、その間の資金繰り対策として活用されています。
売掛金の回収期間が長い業種での活用
建設業や運送業、製造業の下請け企業などは、元請け企業との取引条件として入金サイトが60日から90日と長期になりやすい傾向があります。このような業種では、売上は計上されているものの手元に現金がない状態が続きます。
ファクタリングを利用して売掛金を早期に現金化することで、仕入代金や外注費、従業員の給与などの支払いに必要な運転資金のギャップを埋めることができます。
日本中小企業金融サポート機構などの解説では、資金ショートを防ぐための対策として、ファクタリングと融資を組み合わせた資金調達が紹介されています。
季節変動や急な支払いへの対応
事業の季節性が強い業種や、急な設備修繕費・原材料費の高騰などで一時的に支払いが増加する場合にも、ファクタリングは有効な選択肢となります。年末年始など取引先の休業期間と自社の支払期日が重なる場合、入金が遅れることで資金繰りが逼迫するケースがあります。
また、大型案件の受注により仕入や外注費が先行して発生する場合、入金までの資金ギャップを埋める必要があります。こうした一時的な資金需要に対して、ファクタリングを活用することで資金ショートを防ぎながら事業を継続できると考えられます。
目的2:成長投資・事業拡大のための資金確保
一部の中小企業支援機関やフィンテック関連の解説では、ファクタリングを「事業拡大や成長投資に必要な資金を確保する手段」として紹介しています。
特にスタートアップ企業では、売上は伸びているものの請求から入金までのタイムラグによりキャッシュフローが不安定になりがちです。
成長企業における資金ニーズ
スタートアップ企業や新規事業を立ち上げた企業では、広告宣伝費や人材採用費、開発費などの成長投資に資金を振り向けたくても、手元資金が不足することで投資機会を逃してしまうケースがあります。
ファクタリングを活用して売掛金を早期に現金化することで、成長のスピードを落とさずに必要な投資を実行できる可能性があります。資金化までの期間が短いため、「来月の大型広告キャンペーンに間に合わせたい」といった短期的な資金ニーズに適しているとされています。
手数料負担と成長効果のバランス
成長投資を目的としたファクタリング利用では、手数料というコストが発生するため、「投資による成長効果」と「手数料負担」のバランスを慎重に検討する必要があります。
短期的な投資資金の確保には有効ですが、継続的に利用すると手数料負担が累積し収益性を圧迫する可能性があります。そのため、「どの程度の期間・頻度で利用するか」を事前に計画しておくことが重要です。
初回の投資で成果を出し、その後は売上増加による自己資金で事業を回すといった出口戦略を明確にしておくことが望ましいとされています。
目的3:銀行融資が困難な局面での資金調達
中小企業向けの解説では、「赤字決算や債務超過が続いている企業は銀行融資を受けにくい一方で、ファクタリングであれば利用できる場合がある」と説明されています。
ファクタリングの審査では主に売掛先企業の信用力が重視され、自社の財務状況は必ずしも決定的な要素にはならないとされています。
財務状況が厳しい企業での利用可能性
自社は赤字決算であっても、取引先が上場企業や信用力の高い大手企業である場合、その売掛債権は高く評価される可能性があります。このため、「銀行融資が通らない」状況での資金調達を探している経営者にとって、ファクタリングは現実的な選択肢の一つとなりえます。
ただし、ファクタリングの手数料は一般的な銀行融資の金利と比較すると高めになる傾向があるため、長期的・恒常的な資金調達手段として依存することは、コスト面で企業経営を圧迫するリスクがあります。
緊急時の資金調達手段としての位置づけ
銀行融資が困難な局面でのファクタリング利用は、「緊急対応」や「一時的な資金繰り対策」としての位置づけで検討することが適切と考えられます。
あくまで「銀行との関係を修復するまでの期間」や「業績が回復して融資が受けられるようになるまでの橋渡し」として活用し、並行して財務改善に取り組むことが重要です。
根本的な収益改善やコスト削減を伴わずに継続的に利用すると、手数料負担が重なりかえって経営を圧迫する悪循環に陥るリスクがある点には注意が必要です。
ファクタリングと融資の使い分け
ファクタリングと銀行融資は、それぞれ異なる特徴を持つ資金調達手段です。両者の特性を理解し、自社の状況に応じて適切に使い分けることが、効果的な資金繰り管理につながります。
資金調達の目的による使い分け
長期的な設備投資や恒常的な運転資金には、金利負担が比較的低い銀行融資が適しています。一方、短期的な資金ギャップや急な資金需要には、審査が早く資金化までの期間が短いファクタリングが有効とされています。
このように、資金が必要となる期間や目的に応じて、両者を組み合わせることで資金繰りの安定性を高めることができます。例えば、基本的な運転資金は融資で確保し、繁忙期の一時的な資金需要にはファクタリングを活用するといった使い分けが考えられます。
ファクタリング利用時の注意点
金融庁は、ファクタリングの利用に関する注意喚起を公表しており、「手数料水準の確認」「契約内容の精査」などについて注意するよう呼びかけています。ここでは、ファクタリングを利用する際に確認すべきポイントについて説明します。
金融庁による注意喚起の内容
金融庁は、貸金業登録を受けていない事業者が実質的には金銭の貸付けにあたる契約を「ファクタリング」と称して提供している事例があることを指摘しています。
このような違法な業者を利用してしまうと、法外な手数料を請求されたり契約内容をめぐるトラブルに巻き込まれたりするリスクがあります。
ファクタリング会社を選定する際には、会社の実績、契約条件の透明性、説明の分かりやすさなどを総合的に確認することが重要です。
継続利用による経営への影響
中小企業向けの解説では、ファクタリングの手数料負担が重くなりすぎると資金繰り悪化の原因になりえるため、継続利用や常習化には注意が必要とされています。
このような状況が続くと、利益率が低い企業では収益性が大きく悪化し、かえって資金繰りを圧迫する悪循環に陥る可能性があります。
ファクタリングはあくまで一時的な資金調達手段として位置づけ、根本的な収益改善やコスト削減などの経営改善策と並行して進めることが重要です。
まとめ
本記事では、企業がファクタリングを利用する主な目的を3つの観点から整理しました。それぞれの目的によって、適切な利用シーンや許容できる手数料水準、利用期間が異なります。
自社がどの目的に該当するのかを明確にすることで、適切なファクタリング会社の選定や利用計画の立案がしやすくなります。専門家と相談しながら、資金計画全体の中でファクタリングの役割を定義し計画的に利用することが重要です。
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経営支援会社で資金繰り相談に関わった経験をもとに、経営改善や資金調達に関する記事を執筆。制度の解説や比較記事を得意とし、専門的な内容を“実務で使える知識”として整理するスタイルに定評がある。読者の疑問を想定した丁寧な解説を追求している。

