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個人事業主でも使える?ファクタリング利用条件と必要書類まとめ

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フリーランスや個人事業主にとって、クライアントからの入金待ちで資金繰りが厳しくなる状況は珍しくありません。外注費や仕入れの支払いが迫っているのに、入金が1〜2か月先というケースも日常的に発生しています。

そこで注目されているのが、「ファクタリング」という資金調達方法です。2025年現在は、請求書と本人確認書類の2点だけで申し込めるサービスも増えており、従来よりも手軽に利用できる環境が整ってきました。

本記事では、個人事業主が利用できるファクタリングの条件と必要書類について解説します。

ファクタリングとは?個人事業主でも利用可能な仕組み

ファクタリングは、売掛債権を第三者に売却することで、入金期日前に現金化できるサービスです。近年では、個人事業主向けのサービスも増加しており、資金繰りの選択肢として認知されつつあります。まずは、基本的な仕組みと利用できる背景について解説します。

ファクタリングの基本的な仕組み

ファクタリングとは、企業や個人事業主が保有する売掛債権を第三者(ファクタリング会社)に売却することで、本来の入金期日を待たずに資金化できる仕組みです。利用時には所定の手数料が差し引かれます。

融資と違い、ファクタリングは債権譲渡取引であるため、貸借対照表上の負債が増加しません。このため、財務指標への影響を抑えながら資金調達できる利点があります。

契約関係者の数により、2社間型と3社間型に大別されます。2社間型では、取引先に知られることなく債権を現金化できます。利用企業とファクタリング会社のみで、手続きが進むためです。

3社間型は取引先も契約当事者となるため、債権の回収リスクが低減され、その分手数料率も下がる傾向があります。

個人事業主も利用できる背景

従来は法人取引が主流でしたが、近年はフリーランスや個人事業主の資金ニーズに対応したサービスも登場しています。フリーランス人口の増加や、書類提出から審査までWeb上で完結できる技術の発展が、サービス拡大を後押ししています。

制作業務や専門コンサルティングなどのフリーランス案件では、納品後に請求書ベースで代金を受け取る商習慣が一般的です。請求書が発行される取引であれば、ファクタリングによる資金化が可能となります。

各社で受入条件が異なるため、申込前に個人事業主への対応状況を確認しておきましょう。

銀行融資との違い

両者とも資金確保の方法ですが、法的な仕組みと利用時の影響には明確な違いがあります。融資は借入金として返済義務を負いますが、ファクタリングは債権譲渡であるため、原則として買戻し義務はありません。ただし、2社間型では売掛金回収後の支払い義務があります。

融資審査では借入人の信用情報が重視されますが、ファクタリングでは売掛先の支払い能力がより重要な判断材料となります。

資金化スピードでも差があり、融資が数週間かかるのに対し、ファクタリングは最短で申込当日の入金実績もあります。

個人事業主がファクタリングを利用するための条件

個人事業主がファクタリングを利用する際には、いくつかの基本的な条件を満たす必要があります。これらの条件はファクタリング会社によって異なりますが、共通する要件も存在します。以下、利用条件と審査が厳しくなるケースについて解説します。

基本的な利用条件

ファクタリング利用時には、各社共通で以下の条件を満たす必要があります。

  • 請求書など書類で確認できる確定債権であること
  • 取引先が法人格を持つこと
  • 日本国内に事業拠点と金融機関口座があること
  • 債権譲渡の重複や不正がないこと

最も基本的な要件は、債権が確定済みであることです。請求書・発注書・契約書のいずれかで取引内容と金額を明示できる必要があります。

取引相手が法人企業であることも重要な条件です。売掛先が個人の場合、信用調査が困難なため審査通過率が下がります。

利用できないケース

以下のような場合は審査が厳しくなる、または利用できません。

  • 取引相手が個人である場合
  • 入金予定日が未定または3か月以上先の場合
  • 架空請求の疑いがある取引である場合
  • 利用者の信用に問題がある場合

個人の場合、企業信用調査サービスでの確認ができず、回収見込みの判断が困難になるためです。

入金時期が不明確な債権や、支払い期日まで3か月以上ある長期債権は、リスクが高いため敬遠されがちです。多くのファクタリング会社では、支払い期日が30日〜60日以内の短期債権を主な対象としています。

個人事業主が準備すべき必要書類

個人事業主がファクタリングを利用する際には、法人と比べて提出書類が少なく設定されているケースが多いとされています。審査をスムーズに進めるためには、事前に必要な書類を正確に準備しておくことが重要です。ここでは、主要な書類について解説します。

売掛金を証明する書類

必須書類は請求書であり、これが債権の根拠となります。請求先名称・発行日付・入金期限・請求額・業務内容の記載が不可欠です。形式は紙・PDF問わず、記載内容が正確であることが重要です。

発注書や契約書も用意すると、取引の信憑性が高まり審査通過率が上がります。初回利用時や100万円超の債権では、これらの追加書類が審査で重視されます。

納品書・検収書は、サービス提供済みの証明として提出を求められることもあります。

本人確認書類と事業実態を示す書類

本人確認書類により、申込者の実在性と事業者適格を確認します。顔写真入りの公的証明書(免許証・マイナンバーカード・パスポート等)の提示が標準です。期限切れの書類は使用できません。

事業実態の確認資料として、開業届・確定申告書・帳簿などの提出を要求される場合があります。Web完結サービスの中には、簡易審査で一部書類が不要なケースもあります。

申込前に各社の公式サイトで必要書類リストを確認しましょう。

銀行口座の入出金履歴

銀行口座の通帳コピーや取引明細で、過去の入出金履歴を確認されることがあります。提出期間は3か月〜半年分が標準的です。

取引先からの過去入金記録があれば、継続取引の証拠として評価されます。継続取引の実績により、債権回収の確実性が高いと判断されるからです。

ネットバンキング利用者は、取引履歴画面のキャプチャまたはCSV・PDFデータで提出できます。

審査のポイントと通過のコツ

ファクタリングの審査は、銀行融資とは異なる基準で行われます。申込者本人の信用よりも、売掛先企業の信用力が重視される傾向にあります。審査で評価される主なポイントと、審査通過率を高めるための準備について解説します。

審査で重視される主な項目

ファクタリング審査において最優先されるのは、取引先企業の支払い能力です。倒産リスクの低い安定経営企業か、過去の決済履歴に遅延がないかを中心に確認されます。上場企業や行政機関が取引相手の場合、債権の回収確実性が高いため審査で有利に働くでしょう。

また、債権内容の明確性も重要な評価軸となります。請求額・入金期限・取引詳細が具体的に記された請求書は、審査担当者が回収見込みを判断しやすく、高評価につながります。

さらに、取引の継続実績も加点要素です。単発取引と比較して、複数回の入金履歴がある取引先の債権は、回収確実性の観点から優遇されます。

審査通過率を高めるための準備

審査承認を得るには、提出書類の完全性が鍵となります。請求書には取引先名・請求額・入金日を明記し、視認性の高いフォーマットで作成してください。デジタルデータはPDF化しておくと、即座にアップロード可能です。

過去の入金記録を通帳コピーや取引明細で提示できるよう準備しましょう。同一取引先からの継続入金実績があれば、信頼関係の証拠として機能します。

発注書・契約書・納品書などの補完資料も揃えると、審査精度が向上します。

避けるべき申込時の注意点

審査で不利にならないため、申告内容に虚偽がないことが絶対条件です。債権額や入金日の虚偽申告は、契約破棄だけでなく刑事責任を追及される恐れがあります。

同一債権を複数社に譲渡する行為(二重譲渡)は、法令違反となるため絶対に避けてください。二重譲渡は詐欺罪に問われるリスクがあり、業界データベースへの登録により他社利用も困難になります。

入金日が3か月以上先の債権や、金額未確定の見積書段階では、ほとんどのファクタリング会社が受け付けません。

オンライン完結型サービスの活用

2025年現在、テクノロジーの進化により、従来よりも少ない書類で申し込めるファクタリングサービスが登場しています。AI審査やクラウド会計連携を活用したオンライン完結型サービスは、個人事業主にとって利便性が高いと考えられます。

オンライン完結型の特徴

オンライン完結型は、申請・審査・契約・入金の全プロセスをWeb上で処理できる形態です。来店不要・郵送不要のため、手続き時間を大幅に短縮できます。

多くのサービスでは、請求書・身分証明書の2種類だけで利用開始できます。AI自動審査システムを導入している事業者では、申込から30分〜数時間で結果通知される実績があります。

即日対応の利便性がある反面、手数料率は対面型より高い傾向です。

各種サービスの特徴

AI審査型サービスは、機械学習による自動判定で即日入金を可能にしています。請求書ファイルをアップロードすれば、自動的に審査プロセスが起動します。

クラウド会計連携型では、会計システムから債権データを直接読み込み、審査の自動化を実現しています。個別アップロード作業が不要になり、取引履歴も自動反映されるため、審査精度と処理スピードが向上します。

費用を抑えるポイント

コスト削減の有効策は、オンライン専業のファクタリング業者を利用することです。実店舗の維持費・人件費がかからないため、手数料率を低く抑えられています。AI審査システム採用企業では、審査コスト削減により手数料が相対的に安価です。

同一業者との継続取引で、信用実績を積み上げることも効果的です。初回は手数料が高くても、リピート利用により優遇レートが適用されるケースがあります。

取引先の信用力が高い債権から優先的に資金化する選別戦略も有効です。上場企業・行政機関・大企業が取引相手の債権は、回収リスクが低いため手数料率が下がります。

まとめ

個人事業主やフリーランスにとって、資金繰りを支える手段としてファクタリングが注目されています。2025年時点では請求書と身分証のみで利用できるオンライン型が主流で、即日入金にも対応しています。

利用には売掛先が法人で、支払い期日が確定していることが条件です。審査では取引先の信用力が重視され、上場企業や官公庁との契約があると通過率が高くなります。

一方で、貸金業を装う違法業者も存在するため、手数料や償還請求権の有無を確認し、信頼できる業者を選ぶことが重要です。