近年、中小企業や個人事業主の資金繰り改善手段として注目されるファクタリングですが、契約トラブルや違法業者による被害もあります。
本記事では、実際に報告されているトラブル事例や法的観点を踏まえ、ファクタリング契約で失敗しないための実践的なチェックリストを提示します。安全にファクタリングを活用するために必要な知識と具体的な確認ポイントを解説します。
ファクタリングの基礎知識と現状
ファクタリングを安全に利用するには、基本的な仕組みと法的位置づけを正しく理解することが重要です。ここでは、ファクタリングの定義と主な種類について解説します。
ファクタリングの法的位置づけと仕組み
ファクタリングは、企業が保有する売掛債権を第三者に譲渡することで資金を調達する仕組みです。この取引は民法第555条(売買契約)および第466条(債権譲渡)に基づく適法な取引として位置づけられています。
金融庁も、ファクタリングを「貸金業に該当しない債権の売買」として認めており、正当な事業として扱われています。ただし、契約内容によっては実質的に貸金業に該当すると判断される場合もあるため、契約内容の精査が必要です。
2社間と3社間の違い
ファクタリングには主に「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」の2種類があります。
2社間ファクタリングは、利用企業とファクタリング会社の間で契約が完結し、売掛先に通知されないため秘密性が高い反面、手数料はやや高めに設定されています。
一方、3社間ファクタリングは売掛先企業も含めた3者間での契約となり、手数料は比較的低めですが、売掛先への通知が必要となります。それぞれの特性を理解した上で、自社の状況に適した方法を選択することが重要です。
実際に多いファクタリング契約のトラブル事例
ファクタリング利用時には様々なトラブルが報告されています。ここでは、実際に発生している主要なトラブルの種類とその特徴について説明します。
高額手数料と違法金利の問題
ファクタリングにおける最も多いトラブルの一つが、相場を大きく逸脱した高額な手数料の請求です。手数料を年率換算した場合に利息制限法の上限を超える場合、実質的に貸金業とみなされる可能性があります。
過去には「名目上はファクタリングだが実質は高利貸し」とみなされ、法的措置を受けた事例も報告されています。契約前には必ず手数料率を確認し、相場と照らし合わせて妥当性を判断することが重要です。
債権譲渡通知による信用失墜
2社間ファクタリングを利用する企業の多くは、取引先に資金繰りの状況を知られたくないという理由から選択しています。しかし、契約内容によっては事前の説明なく売掛先に債権譲渡通知が送付されるケースがあります。
この通知により、取引先企業に資金繰りの悪化を疑われ、信用を失墜させる結果につながった事例が複数報告されています。契約書において債権譲渡通知のタイミングや条件について明確に定められているかを確認することが必要です。
偽装ファクタリングと違法業者
近年見られるのが、ファクタリングを装った実質的な貸金業による被害です。金融庁や警察による摘発事例では、「担保や保証人が必要」「分割払いが可能」といった条件を提示する業者が、実態としては無登録の貸金業を営んでいたケースが確認されています。
本来のファクタリングは債権の売買であり、担保や保証人は不要です。これらを求める業者は貸金業法に違反している可能性が高いため、契約を避けるべきです。
また、「償還請求権付き」や「買戻特約」が契約に含まれている場合も、実質的に貸金業とみなされる可能性があるため注意が必要です。
利用者側が加害者となるケース
ファクタリング会社側が被害者となるトラブルも存在します。代表的なのが「二重譲渡」や「架空債権の売却」です。同一の売掛債権を複数のファクタリング会社に売却する二重譲渡は詐欺罪に該当します。
過去には、架空の債権を売却して多額の資金をだまし取ったとして経営者が逮捕される事件も報道されています。
このようなトラブルは利用企業の信用を大きく損なうだけでなく、刑事責任を問われる重大な犯罪行為です。誠実な取引を心がけ、正確な債権情報を提供することが利用者側にも求められます。
トラブル回避のための実践的チェックリスト
ファクタリング契約時のトラブルを防ぐためには、契約前の入念な確認が不可欠です。ここでは具体的なチェックポイントを提示します。
会社の実態と信頼性を確認する
ファクタリング会社を選定する際には、まず会社の基本情報を確認することから始めましょう。以下の項目が明確に公開されているかをチェックします。
- 会社名、代表者名、所在地
- 電話番号、資本金、設立年
- 事業内容、取引実績
ウェブサイトに情報が不十分な場合や、所在地が架空の住所である場合は警戒が必要です。また、業界団体に加盟しているかも信頼性の一つの指標となります。実際にオフィスを訪問して面談できるか、担当者の対応が誠実であるかも重要な判断材料です。
契約書の内容を精査する
契約書は必ず契約前に受け取り、十分な時間をかけて内容を精査しましょう。確認すべき主要項目は以下の通りです。
- 譲渡対象となる債権の詳細
- 債権譲渡通知の方法とタイミング
- 手数料の金額と計算方法
- 解約条件、損害賠償条項
契約書の控えを提供しない業者や、その場での即決を求める業者は危険です。また、口頭での説明と契約書の内容が異なる場合は、必ず書面での確認を求めましょう。不明な点や理解できない条項がある場合は、契約前に弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
手数料の妥当性を確認する
手数料が業界相場の範囲内に収まっているかを必ず確認しましょう。相場を大きく逸脱する手数料を提示された場合は、その理由を明確に説明してもらう必要があります。
複数のファクタリング会社から見積もりを取得し、比較検討することで妥当な手数料水準を把握することができます。極端に低い手数料を提示する業者も、後から追加費用を請求される可能性があるため注意が必要です。
貸金業該当要素の有無を確認する
ファクタリングを装った違法な貸金業を見極めるためには、いくつかの確認ポイントがあります。まず、担保や保証人を要求されないかをチェックしましょう。本来のファクタリングでは債権の売買であるため、これらは不要です。
次に、償還請求権や買戻特約の有無を確認します。金融庁の注意喚起文書でも指摘されているように、これらの条項がある場合は実質的に貸金業とみなされる可能性があります。また、分割払いでの返済を提案される場合も要注意です。
評判と実績を事前調査する
契約前には、インターネット上での評判や口コミを確認することも有効です。検索エンジンやSNSでの評価、専門サイトのレビューなどを参考にしましょう。
ただし、すべての口コミが信頼できるわけではないため、複数の情報源を確認することが重要です。特に業界団体や弁護士事務所などの専門家による評価は参考になります。長年の実績がある会社ほど信頼性が高い傾向にあります。
相談窓口を把握しておく
万が一トラブルが発生した場合に備えて、相談できる窓口を事前に把握しておきましょう。金融庁の「金融サービス利用者相談室」や、各都道府県の消費生活センター、弁護士会などが相談先として利用できます。
また、契約前の段階で不安な点がある場合も、これらの窓口に相談することで客観的なアドバイスを得ることができます。早期の相談がトラブルの未然防止につながります。
安全なファクタリング利用のための基本原則
トラブルを回避し、安全にファクタリングを活用するためには、いくつかの基本原則を守ることが重要です。
複数社を比較検討する
一社のみで決定せず、必ず複数のファクタリング会社から見積もりを取得し、比較検討することをおすすめします。手数料だけでなく、サービス内容、対応の質、契約条件などを総合的に評価しましょう。
急いでいる場合でも、最低2社程度は比較することで、相場感を把握し、不当な条件を見抜くことができます。
相場からの逸脱に警戒する
業界の標準的な手数料相場や契約条件から著しく外れている場合は、必ず理由を確認しましょう。公開されている公式情報や業界団体の指針と照らし合わせて、妥当性を判断することが重要です。
異常に有利な条件を提示する業者も、後から不利な条件を追加される可能性があるため注意が必要です。
不安があれば専門家に相談する
契約内容に少しでも疑問や不安がある場合は、契約前に弁護士や税理士などの専門家に相談しましょう。専門家の客観的な意見を聞くことで、見落としていたリスクに気づくことができます。
特に高額の債権を譲渡する場合や、初めてファクタリングを利用する場合は、専門家のサポートを受けることが推奨されます。
代替手段も検討する
ファクタリングが唯一の選択肢ではないことも理解しておきましょう。どうしても不安が残る場合や、条件が合わない場合は、他の資金調達方法も検討する価値があります。
近年では新しい資金繰り改善サービスも登場しています。自社の状況に最も適した方法を選択することが重要です。
まとめ
ファクタリングは民法上も認められた適法な資金調達手段であり、適切に利用すれば中小企業や個人事業主の資金繰り改善に有効な選択肢となります。しかし、市場の拡大に伴い違法業者や悪質な契約によるトラブルも見られるのが現状です。
本記事で紹介したチェックリストと確認ポイントを活用し、契約前の入念な確認と専門家への相談を心がけることで、安全なファクタリング利用を実現できます。

