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固定費の見直しで資金繰りを守る|会社が削っていい順・ダメな順

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「売上はそこまで悪くないのに、なぜか毎月お金が残らない」「数カ月先の資金繰りを考えると胃が痛い」。会社の資金繰りに不安を抱える経営者の多くが、同じ悩みを口にします。固定費は売上にかかわらず毎月必ず発生するため、一度見直しを行うと継続的なコスト削減効果が生まれます。

一方で、「どの固定費から削ればよいのか」「人件費や広告費に手を付けて本当に大丈夫なのか」といった不安から、見直しに踏み切れない企業も少なくありません。この記事では、会社の固定費を削っていい順・削ると危険なダメな順という視点から、具体的な削減方法を整理します。

固定費見直しが資金繰りを守る理由

固定費の削減が資金繰りに与える影響は大きく、その効果は継続的に現れます。売上を伸ばすことが難しい局面でも、固定費を削減できれば手元資金の確保につながるため、資金繰り改善において優先度の高い取り組みといえます。

ここでは、なぜ固定費の見直しが資金繰り改善に直結するのか、その理由を整理します。

固定費は売上に関係なく発生する費用

固定費は、売上の増減に関係なく発生する費用であり、人件費や賃料、水道光熱費などが代表的な項目です。売上が減少しても固定費は変わらないため、利益を圧迫しやすく、資金繰りに大きな影響を及ぼします。

固定費を削減すると、その効果は毎月継続して現れるため、単発の売上増加よりも資金繰りの改善に直結しやすいという特徴があります。たとえば、月々の固定費を削減できれば、年間を通じて大きなキャッシュフロー改善が見込めます。

やみくもな削減は逆効果になるリスクがある

一方で、固定費をやみくもに削減すると、従業員のモチベーション低下やサービス品質の悪化など、長期的な収益力にマイナスの影響を与えるリスクがあります。特に人件費や広告費といった売上に直結する費用を削り過ぎると、かえって資金繰りが悪化する可能性があります。

そのため、固定費の見直しを検討する際は、削っていい固定費と削ると危険な固定費を切り分け、優先順位を付けて取り組むことが重要です。単なるコストカットではなく、戦略的な固定費の最適化が求められます。

会社の固定費に含まれる主な項目

固定費の見直しを始める前に、まず会社の固定費にはどのような項目が含まれるのかを正しく理解する必要があります。全体像を把握しないまま削減に着手しても、効果が出にくいだけでなく、重要なコストを見落とすリスクもあります。ここでは、代表的な固定費の項目を整理します。

固定費の代表的な項目

固定費とは売上や生産量に左右されず、毎月一定額が発生する費用を指します。企業の固定費として、主に以下の項目が挙げられます。

  • 人件費(基本給や賞与など)
  • オフィス賃料・地代
  • 水道光熱費(電気・ガス・水道)
  • 通信費(電話・インターネット)
  • リース料・レンタル料
  • サブスクリプション(SaaS、クラウドサービスなど)
  • 保険料(損害保険・各種ビジネス保険など)
  • 広告宣伝費の一部(固定で契約している枠など)

これらは会社の運営を支える重要な費用である一方で、契約や利用状況を見直すことで削減の余地があるケースも多くあります。

中小企業では人件費とオフィス関連費用の割合が大きい

特に中小企業では、オフィス関連費用と人件費が固定費の大きな割合を占めることが多く、ここにメスを入れられるかどうかが資金繰り改善のポイントになります。

ただし、これらの費用は事業の根幹に関わるため、削減する際には慎重な判断が求められます。まずは自社の固定費を項目別に洗い出し、それぞれの金額と割合を把握することから始めましょう。

削っていい固定費の優先順位

固定費の見直しでは、削減による影響が小さく、効果が出やすい項目から着手することが重要です。手をつけやすい項目で早期に成果を出すことで、次の削減ステップへの判断もしやすくなります。

ここでは、削っても業務への影響が比較的少ない固定費を優先順位の高い順に整理します。

使っていないサブスク・ツール類

サブスクリプションサービスは、見直しやすく効果が出やすい固定費の筆頭です。利用頻度が低いSaaSやストレージサービス、重複しているツールを解約・統合することで、すぐに固定費を削減できるケースがあります。

以下の観点で棚卸しを行うことが有効です。

  • アカウント数が実態に比べて多すぎないか
  • 複数のツールで同じ機能を重複契約していないか
  • 無料プランや安価なプランに切り替えられないか

特にコロナ禍以降に導入したツールは、利用状況が変化している可能性が高いため、見直しの対象として優先的に検討しましょう。

通信費と水道光熱費の見直し

通信費は、料金プランや回線の見直しによって削減しやすい費用です。以下の点をチェックするとよいでしょう。

  • 使っていない回線・オプションが残っていないか
  • 回線を一本化・集約できないか
  • IP電話やオンライン会議ツールの活用で通話料を抑えられないか

水道光熱費については、節電・節水などの運用改善に加え、電力・ガス自由化を活用した契約見直しも有効です。不要な照明・空調の使用を減らすといった短期の取り組みと、電力契約の切り替えといった中長期の施策を組み合わせることが効果的です。

保険料・リース料・外注費の見直し

保険料やリース料も固定費の一部として計上されることが多く、契約内容を見直すことで削減余地が生まれる場合があります。ただし、保険については補償内容を削り過ぎるとリスクが高まるため、専門家の意見を踏まえて慎重に検討することが重要です。

継続的な外注費が大きい場合、業務プロセスの見直しやシステム導入によって費用対効果の改善を図ることができます。ただし、外注を安易に削減すると業務が回らなくなるリスクもあるため、社内でできる業務と外注すべき業務を明確に区分することが重要です。

削ると危険な固定費の見極め方

固定費の中には、削り方を間違えると中長期的に大きなダメージになる可能性が高いものがあります。「削れるから削る」という発想ではなく、その費用が事業にとって何を支えているかを見極めることが先決です。ここでは、慎重に扱うべき固定費を整理します。

コア人材の人件費

人件費は固定費の中でも大きな割合を占める一方で、安易な削減は避けるべきです。特に売上に直結する営業・エンジニア・職人などのコア人材の人件費を大きく削ると、売上減少や離職につながり、かえって資金繰りが悪化するリスクが高くなります。

人件費については、残業削減や業務効率化、非コア業務のアウトソーシングなど、構造を変えるアプローチから検討する方が望ましいといえます。給与そのものを削減するのではなく、働き方や業務プロセスを見直すことで、実質的な人件費の最適化を図ることが重要です。

売上に直結する広告・販売促進費

広告費の一部は固定契約として毎月発生している場合がありますが、売上に直結している施策まで一律に削減すると、売上減少を通じて資金繰りを悪化させる可能性があります。

費用対効果が測りにくい広告や惰性で続けている掲載枠から見直し、利益貢献度が高い施策は維持・強化することが重要です。広告費を削減する際は、各施策の効果を数値で測定し、投資対効果の低いものから優先的に着手することが求められます。

品質維持や安全に関わる費用

品質管理や安全対策、コンプライアンスに関わる費用を削り過ぎると、クレーム・事故・法令違反などのリスクが高まります。これらの費用は短期的にはコストに見えても、中長期で見れば会社の信用や事業継続性を支える投資に近い側面があります。

特に製造業や建設業など、品質や安全が事業の根幹を成す業種では、この領域の費用削減は極めて慎重に行う必要があります。一度失った信用を取り戻すには多大なコストと時間がかかるため、安易な削減は危険です。

固定費見直しの実践ステップ

固定費の見直しを効果的に進めるためには、体系的なアプローチが必要です。感覚や印象で削減対象を決めるのではなく、数字に基づいて優先順位を整理することが、実効性ある取り組みにつながります。ここでは、実践的なステップを解説します。

固定費の洗い出しと評価

まずは、直近の試算表や総勘定元帳などを使って、固定費に該当する科目と金額を洗い出します。月次ベースの一覧表を作成し、人件費・賃料・水道光熱費・通信費・サブスク・保険・リース料・広告費などに分類すると、どこにどれだけコストがかかっているかを把握しやすくなります。

次に、各項目について削減効果の大きさと削減のしやすさ(社内調整・契約変更の難易度)を評価します。効果が大きく実行しやすいものから着手することで、早期に成果を出すことができます。

削っていい順・ダメな順の整理と実行

自社にとっての削っていい順・削ると危険な順を以下のように一覧化すると、判断の軸が明確になります。

  • すぐ削減検討すべきもの:未使用のサブスク・重複ツール・使っていない回線など
  • 要検討のもの:保険の過剰部分・リース条件・オフィス面積など
  • 慎重に扱うべきもの:コア人材の人件費・売上直結の広告・品質安全関連費用

削減対象が決まったら、契約変更や解約交渉、ツール統合などの具体的なアクションに移ります。その際、どの項目を月々いくら削減できたかを数値で把握し、削減効果を資金繰り表にも反映させることで、経営判断に活かしやすくなります。削減実施後も定期的に効果を測定し、想定通りの成果が出ているか、業務に悪影響が出ていないかをモニタリングすることが重要です。

それでも足りない時の資金調達手段

固定費の見直しは資金繰り改善の有効な手段ですが、売上減や大型支出などが重なると、それだけでは資金不足を解消しきれないこともあります。

固定費削減と資金調達を組み合わせることで、短期と中長期の両面から資金繰りを守ることができます。ここでは、短期的な資金繰りを補うための選択肢を解説します。

銀行融資・リスケジュール

資金繰り改善策として、運転資金の融資や返済条件の見直し(リスケジュール)が有効な場面があります。ただし、融資には審査や時間がかかること、リスケジュールは今後の資金調達に影響する可能性があることなど、メリット・デメリットを踏まえた検討が必要です。

融資を検討する際は、資金使途や返済計画を明確にし、金融機関に対して説得力のある説明ができるよう準備することが重要です。また、リスケジュールは最終手段と位置づけ、まずは固定費削減や売上向上など、他の手段を優先的に検討することが望ましいでしょう。

ファクタリングによる売掛金の資金化

ファクタリングは、売掛金をファクタリング会社に売却して資金を得る手法であり、返済義務を負う借入とは性質が異なります。赤字決算や債務超過の場合でも利用できるケースがあり、資金繰り改善の選択肢の一つとして検討する価値があります。

一方で、手数料や契約条件はサービスによって大きく異なるため、比較検討と費用対効果の確認が不可欠です。固定費を見直したうえで、それでも一時的な資金ギャップが生じる場合に、売掛金を現金化して資金繰りを平準化する手段としてファクタリングを位置づけることが適切です。

まとめ

固定費削減は、利益率や資金繰りの改善に直接寄与する取り組みです。一方で、人件費や売上直結の広告、品質・安全に関わる費用を安易に削ることは、中長期的な事業継続性を損なうリスクがあります。

そのため、サブスク・通信費・水道光熱費など削りやすい項目から着手しつつ、自社にとっての削っていい順・ダメな順を整理することが重要です。固定費の見直しは一度で終わりではなく、定期的に棚卸しを行い、継続的に最適化していくことが求められます。

さらに、資金繰りに不安が残る場合には、融資やファクタリングなどの資金調達手段を組み合わせて検討することで、短期と中長期の両面から資金繰りを守ることができます。

ABOUT ME
佐伯樹里
企業インタビューや業務改善の編集記事を多く手がけるライター。複数の中小企業の経理・総務支援に関わった経験から、現場視点での課題把握と改善提案の解説に強みを持つ。請求書管理、コスト最適化、資金繰りの基礎まで、幅広いテーマに対応可能。