資金繰りの相談先に悩んでいる中小企業や個人事業主は少なくありません。売上はあるのに入金サイトが長く、支払いが先行して毎月資金繰りに不安を感じている経営者も多いでしょう。
そうした経営者のために、日本には金融機関・専門家・公的機関など複数の相談窓口が用意されています。この記事では、それぞれの窓口の役割と特徴を整理し、自社の状況に合った相談先の選び方を解説します。
資金繰りの相談先はどこがよいか
資金繰りの相談先には、それぞれ異なる役割と特徴があります。自社の状況や相談内容に応じて適切な窓口を選ぶことが、効果的な問題解決につながります。まずは、どのような相談先があるのかを把握しましょう。
相談できる主な窓口の種類
中小企業・小規模事業者が資金繰りの相談をできる主な窓口は以下の通りです。
- 公的機関:日本政策金融公庫、よろず支援拠点、商工会議所・商工会、信用保証協会
- 金融機関:取引銀行、信用金庫、信用組合
- 専門家:税理士、中小企業診断士、経営コンサルタント
このうち公的機関は、原則として無料で資金繰りに関する相談を受け付けています。ただし、商工会議所などは会費が必要な場合もあります。一方、専門家による継続的な支援には費用が発生することが一般的です。
無料相談から始めることが現実的
資金繰りの相談を始める段階では、まず無料で利用できる公的機関や取引金融機関に状況を説明することから始めるとよいでしょう。
公的機関では、資金繰り表の作成方法や今後の見通しについて基本的なアドバイスを受けることができます。その上で、より専門的な支援が必要と判断された場合に、財務に強い税理士や中小企業診断士などの有料支援を検討するという流れが効率的です。
複数の窓口を組み合わせることで、それぞれの強みを活かした支援を受けられます。
公的窓口への相談
公的窓口は無料で利用でき、中立的な立場からアドバイスを受けられる点が大きな特徴です。資金繰りに不安を感じたら、まず公的窓口に相談することで選択肢を広げることができます。費用をかけずに専門的な知見を得られる入口として、積極的に活用したい窓口です。
日本政策金融公庫とよろず支援拠点
日本政策金融公庫は、政府が全額出資する政策金融機関であり、中小企業や小規模事業者向けの事業資金融資を行うとともに、資金繰りや経営全般についての相談窓口を設けています。
民間金融機関を補完する役割を持つため、民間金融機関で融資が難しい場合でも、一定の条件のもとで利用できる制度が用意されています。
よろず支援拠点は、国が設置した無料の経営相談所であり、資金繰りや売上拡大など幅広いテーマについて、在籍する専門家が何度でも無料で相談に応じています。
商工会議所と地域の支援機関
商工会議所・商工会は、地域の事業者を支援する組織であり、資金繰り・経営改善の相談窓口を設けています。会員向けのサービスが中心ですが、非会員でも相談できる場合があります。
地域に密着した組織であるため、地元の金融機関や支援機関とのネットワークを活かした紹介やサポートを受けられる点が特徴です。また、中小企業活性化協議会などの再生支援機関も、資金繰りの悪化が深刻な段階では相談先の選択肢となります。いずれの機関も対面だけでなく、電話やオンラインでの相談にも対応しています。
金融機関への相談
既に取引のある金融機関は、資金繰りの状況を最も把握しやすい立場にあります。早期に相談することで、追加融資だけでなく返済条件の見直しなど、複数の選択肢を検討できます。悪化が進む前に動くことが、金融機関との信頼関係を守る上でも重要です。
取引金融機関に相談するメリット
民間銀行や信用金庫などの金融機関は、既に融資取引のある企業に対して、資金繰りや返済計画に関する相談に応じています。取引実績がある金融機関であれば、事業内容や返済状況を理解しているため、スムーズに相談を進めることができます。
経営状況や返済能力によっては新たな融資が難しい場合もありますが、条件変更(リスケジュール)や他の支援制度の活用などを提案されることもあります。信用金庫や信用組合は地域密着型の金融機関であり、小規模事業者でも相談しやすい雰囲気があります。
相談する際の注意点
金融機関に相談する際は、資金繰りが悪化してから慌てて相談するのではなく、早期に状況を共有することが重要です。
返済が滞ってから相談するよりも、返済が厳しくなりそうな段階で事前に相談したほうが、金融機関側も柔軟に対応しやすくなります。複数の金融機関と取引がある場合は、メインバンクに優先的に相談することが一般的です。
金融機関との信頼関係を維持するためにも、正確な情報を提供し、誠実に対応することが求められます。
専門家への相談
専門家は、資金繰り表の作成支援や経営改善計画の策定、金融機関との交渉支援など、より踏み込んだサポートを提供できます。公的窓口や金融機関と組み合わせることで、具体的な改善策を実行しやすくなります。
どの専門家に相談すべきかは、自社が抱える課題の種類や深刻度によって異なります。
税理士と中小企業診断士の役割
税理士は、決算書の作成や税務申告だけでなく、資金繰り表の作成支援や経営改善計画の策定、金融機関との交渉支援なども提供できる立場にあります。
既に顧問税理士がいる場合は、まず現在の税理士に資金繰りの相談ができるか確認することが第一歩です。ただし、税理士によって得意分野が異なるため、資金繰りや財務改善を専門としていない税理士もいます。
中小企業診断士は、経営全般のコンサルティングを行う国家資格者であり、資金繰り改善だけでなく、売上拡大や業務効率化など幅広い視点からアドバイスを提供できます。
財務コンサルタントの活用
経営コンサルタントや財務コンサルタントは、資金繰り改善に特化した支援を提供する専門家です。特に財務コンサルタントは、資金繰り表の作成や金融機関との交渉、リスケジュールの支援などを専門としています。
資金繰りの悪化が深刻で、複数の金融機関との調整が必要な場合や、事業再生を検討する必要がある場合には、こうした専門家の支援が有効です。
ただし、専門家によって費用体系や支援内容が大きく異なるため、事前に料金や支援範囲を確認し、複数の専門家を比較検討することが重要です。
自社の状況別の相談先
資金繰りの深刻度や相談内容に応じて、適切な相談先を選ぶことが重要です。自社の状況を客観的に把握し、最も効果的な窓口を活用することで、問題解決への道筋が見えてきます。
同じ「資金繰りの不安」でも、初期段階と再生段階とでは、頼るべき窓口がまったく異なります。
初期段階の相談先
資金繰り表の作り方が分からない、今後の見通しを相談したいという段階では、以下の窓口への相談が適しています。
- よろず支援拠点
- 商工会議所・商工会
- 顧問税理士
この段階では、資金繰りの基本的な考え方や、毎月の資金の流れを可視化する方法を学ぶことが優先事項です。無料で利用できる公的機関を活用し、資金繰り管理の基礎を固めることから始めましょう。簡易的な資金繰り表を一緒に作成してくれる公的窓口もあるため、資料が十分に揃っていない場合でも相談しやすい環境が整っています。
改善が必要な段階の相談先
赤字が続いている、追加融資を検討している、既存の借入の返済が厳しくなってきたという段階では、以下の窓口への相談を検討する必要があります。
- 取引金融機関
- 日本政策金融公庫
- 公的窓口
- 税理士・中小企業診断士などの専門家
この段階では、資金繰り表や経営改善計画の作成が求められることが多く、専門家のサポートを受けながら具体的な改善策を検討することが重要です。金融機関に相談する際には、今後の見通しや改善策を示すことで、追加融資や条件変更の可能性が高まります。
再生支援が必要な段階の相談先
返済や支払いの遅延が発生しそうな場合、あるいはすでに遅延している段階では、以下への相談が必要です。
- 中小企業活性化協議会などの再生支援機関
- 公的窓口
- 事業再生に強い専門家(弁護士・財務コンサルタントなど)
この段階では、複数の金融機関との調整や、抜本的な事業再構築が必要になることもあります。中小企業活性化協議会は再生支援に特化しており、金融機関との調整役も担ってくれます。早期に専門的な支援を受けることで、事業を継続できる可能性が高まります。
相談前の準備と早期相談の重要性
相談を効果的に進めるためには、事前に資料を整理しておくことが重要です。また、資金繰りの悪化を自覚したら、できるだけ早期に相談することで、利用できる支援制度や選択肢が広がります。
準備が不十分でも相談自体は可能ですが、資料が揃っているほど具体的なアドバイスを得やすくなります。
準備すべき資料
資金繰り相談の際に持参することが望ましい資料は以下の通りです。
- 直近2〜3期分の決算書(個人事業主は確定申告書)
- 最新の試算表
- 借入金一覧(金融機関名・残高・金利・返済条件)
- 資金繰り表(ある場合)
- 売掛金・買掛金の一覧や入出金予定
決算書や資金繰り表がない場合でも、現状をヒアリングしながら簡易的な資金繰り表を一緒に作成してくれる公的窓口もあります。資料が完璧に揃っていなくても、相談を躊躇する必要はありません。
早期相談が重要な理由
税金や社会保険料の滞納、借入金の返済遅延が発生してから相談するよりも、その前の段階で相談したほうが、利用できる支援制度や選択肢が多くなります。
返済が遅延してしまうと、新たな融資を受けることが難しくなり、条件変更も厳しい条件を求められることがあります。金融機関や取引先との信頼関係を維持するためにも、早期の相談が重要です。
資金繰りに不安を感じている今こそが、相談を始める最適なタイミングといえます。
まとめ
資金繰りの相談先には、公的窓口、金融機関、専門家などがあり、それぞれ異なる役割と特徴を持っています。無料で利用できる公的機関を起点に、金融機関や専門家を組み合わせることで、自社の状況に合った効果的な支援を受けることができます。
相談の際は、決算書や資金繰り表などの資料を可能な範囲で準備しておくことが望ましいですが、資料が揃っていなくても相談を躊躇する必要はありません。早期に相談することで、利用できる選択肢が広がります。
